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自分たちでイメージを作っていけるということ

先日取り上げたCantonese Boyのビデオの書き込みで、asianimprovさんが詳しくコメントをしてくださったので
自分たちで自分たちのイメージを再生産すること

またさらに考えることが出てきました。

これまでアジア系アメリカ人は、「モデルマイノリティ」か「外国人」というのが外から見たイメージで、そういう「作られてしまったイメージ」に、自分たちがどう打ち破るのか、あるいはどうあわせていくのか、というところがポイントだったわけですね。

アメリカの中にある、「白人と黒人」と言う、二つの人種の枠組みの中に、「自分たちはどっちにつくのか」と言う部分で見られることが多かったわけです。これはもちろん単純すぎる話なのですけど、白人につけば優等生、黒人につけば劣等生、と言う見られ方をしたわけです。今もそういう部分があるのですけど。これは、アジア系だけじゃなくて、ラティーノの中にもあるし、黒人の中にもそういうのがあるわけです。あと、アフリカ系やカリブ系移民の中にもあるんですよね。もともとアメリカの中の「人種」という枠組みがないところから来た人たちが、アメリカという国にやってきたとたん、自分たちはどちら側なのか、という「ニゴシエーション」をずっとやってきたわけです。

だから、この間のビデオは何がすごかったかと言うと、その「自分たちはどっち側なのか」と言うことをほとんど意識していない、そういう枠すら感じられなかった、と言う部分にあるのです。ちなみにあのビデオは、もともと「アメリカンボーイ」というイギリス人歌手(エステル)とアメリカ人ラッパー(カニエ・ウェスト)が歌っている曲がオリジナルなんですね。だけれどもあのビデオを見てみると「ああ黒人の真似だなあ」というところがほとんどない。笑っちゃうくらいない。というのは、自分たち向けだからです。黒人を意識していれば、もっと真似っぽい部分が目立つと思うのですが、そういう部分がほとんどといっていいほど目立っていない。「真似をする」ということは、自分たちじゃないことをする、ということですから、それをしない、ということは「そのまんまの自分たち」ということなんですよね。

では、それをできる「自由さ」はどこから来るのか。これはもっと深いところにあるのだと思います。あるいはいろいろな理由があるかもしれません。ひとつは、香港系、あるいは中国系の「ミドルクラス」「中流階級」という経済的理由。英語で言うところのclassです。この部分は私も詳しくないのであまり突っ込めませんが、「華僑」という部分もあるかもしれません。あるいは「華僑」でないにしても、経済が豊かなところで暮らしていることの特権からくるものが、少なからずあると思います。

もうひとつは、土地的(西海岸、サンフランシスコやロサンジェルスなど)なもの。こういうものが生まれてきやすい背景にあるのは、ほかの地域よりも圧倒的にアジア系の人口が多いこと、だれか(どちらか)の側につかなくても、「自分たちでいられる」という環境があること。人口が少なくても、自分たちでいられる、ということは可能だけれど、自分たちが好きなことをやっていても周りを気にしなくていい、というところまでくるのにはそれなりに基盤が必要になってきます。

「アジア人」であるということは、もともといろんな意味で自由が利くのかもしれません。白人にもなれ、黒人にもなれますから。ただ、外から見られたときに「お前たちはどっち側だ」という見方をされてしまうわけです。そこから自由になること、というのはそういう「選択の押し付け」から自由になることでもあるのだと思います。白人でも黒人でもなく、そして「アジア人」という一枚岩でもない。自分たちで自分たちのイメージを再生産していく、ということは、自分たちの中にある多様性をもっと認めていく、ということでもあると思います。だからカントニーズボーイとシャンハイガールの歌が面白くなるんですね。

さらにいうと、この「自由さ」というのは、実はマジョリティが持つ自由さなのではないかと思うのです。日本人である私から見て、アジア系アメリカ人俳優や歌手たちが、「自分たちでないこと」を演じるのに、時には痛々しささえ覚えてしまうのは、彼らが「作られたイメージ」を演じていたからです。でも、それは日本では、日本人=マジョリティが、自分たちのドラマを自分たちで作っているわけですよね。そこには誰かに作られたイメージというのはないわけです(まあ、日本人以外の役の場合、それが大いに出てくるわけですが)。

だから自分たちのイメージを自分たちで作ってやっていくということの、それをアメリカでやることのインパクトはすごいですよ。・・・まあ、少なくとも私には。

そういうことをできるアジア系が増えて、彼らがこれからアジア系全体やアメリカに与えていく影響、というのを考えると、ちょっとわくわくします。
by hanasmilesf | 2009-08-24 17:04 | multicultural topic

randam thoughts and journals from Kyoto~サンフランシスコから日本に戻ってきました~Coming full circle


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