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スーパースターは壁を乗り越えたか

マイケル・ジャクソンの急死のニュースは、かなり衝撃で、アメリカのニュースは速報や追悼番組を流すなど、彼の影響の大きさを改めて伝えています。マスコミは、死亡原因がまだ分からないからとまだ50歳だった彼の死を、「謎の死」としてスキャンダラスに書いていますが、そうやって面白おかしく書いてしまうことには反発を覚えます。もちろん彼の業績を称えたい、と言う人が多いのですが、にもかかわらず、何か秘密めいていると騒ぎ立てるように書くのは不謹慎極まりないように思えます。と言っても、私はマイケル・ジャクソンのファンではないのですけれど。日本の一般的なイメージから見れば「そんなにすごい人なの?」と映るかもしれませんが、マイケルジャクソンがアメリカの音楽業界に与えた影響はとても大きいです。と言うのはニュースでも伝えられている通り黒人歌手でありながらそこまでの成功をおさめたということ、もっといえば、この「成功」とは、お金を稼いだという意味ではなく、彼がポップ音楽、つまり黒人だけではない、白人にもファン層を広げ、「人種」で言えば黒人であるということのハンディを乗り越えてしまった、と言う点にあるのだと思います。そして彼が築き上げた地位によって、キング・オブ・ポップと言われるまでになったのです。いうまでもなく、黒人以外のマイノリティ、アジア系やラティーノに与えた影響も計り知れません。「誰もがあこがれるスーパースター」になったのです。しかし、やはり彼が一番「乗り越えられなかった」のは、「人種」でもあったことは、彼が何度も整形手術を繰り返したことからも明らかでしょう。「黒人歌手」としての業績と、「黒人であること」の彼の中での葛藤を、世間では蔑み、大きな枠組みとしての「人種問題」として、何度も取り上げられながら、それが深い議論にまで発展することはあまりなかった(アカデミアではあったのだろうけど、一般的にはあまりなかったと認識している)。マイケルジャクソンがいなかったら、オプラ・ウィンフリーもオバマも生まれなかったと言う記事があったけれど、それはいい点を突いているのだろうと思う。BBキングもレイ・チャールズもスティービー・ワンダーもいたけれど、ポップ音楽ではない。マイケルがいなかったら、アッシャーやビヨンセやウィル・スミスがいなかったかもしれない、とは思う。マイケルジャクソンが売れた80年代はちょうど公民権運動がひと段落し、アファーマティブ・アクションが注目された時期でもあった。ブッシュ・レーガンの時代でもあった。「人種」の枠組みが議論された時期でもあった。改めて考えてみれば、一つの時代が終わったのかもしれない、あるいは終わろうとしているのかもしれない、とも思います。時代は終わるのではなく、続いてゆくのですけれど・・・。

<追記>
マイケル・ジャクソンと人種に関する記事を見つけました。
LAタイムズ(2005年6月10日付)
Michael Jackson's Hidden Accuser: Racism

WNYC(ニューヨークのラジオ局でも取り上げられました。これは今日の放送かな。)
Michael Jackson: Black or White
"Throughout his career, Michael Jackson had a complex relationship with race. Tricia Rose, professor of Africana Studies at Brown University and author of The Hip Hop Wars: What We Talk About When We Talk About Hip Hop-And Why It Matters, reflects on Jackson's legacy, both musical and social."

あのブライアンの番組です。

Racial Formation in the United States: From the 1960s to the 1990s (Critical Social Thought)

Michael Omi / Routledge


(マイケルジャクソンとは関係ないですが、アメリカの人種形成を論じるには必須の本です。)
by hanasmilesf | 2009-06-27 04:06 | random thoughts

randam thoughts and journals from Kyoto~サンフランシスコから日本に戻ってきました~Coming full circle


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